購入後に思い直せば官能小説とよばれるジャンルの本は初めての購入だった。慣れないせいか、ある日に普段通り新幹線の座席に座って鞄から文庫本を取り出して読みはじめたのはよいが、履いている長ズボンがスリムなストレッチ素材で、しかも席の隣には若い女性だというのに、こんな本を読んでいる自分に気づき、強く反省した。映画を先にみたせいで、どうしても比較論になってしまうが、映画のほうがシンプルで、且つ板尾さんの存在感が素晴らしかった点で好きだ。私は先に觀たり読んだりした作品についいつもえこ贔屓してしまうので、順番によっては感想は変わるかもしれない。これは無意識にそうしてしまったのだが、登場人物にわたしの知人を当てはめながら読んでしまった。もちろん私が誰のことなのかを口外さえしなければ迷惑はかからないはずなのだが、もしかして知人にとっては仮にそれを知らないとしても不愉快なのかもと思い、罪悪感を感じた。しかしその罪悪感が、官能小説のひとつのプレジャーなのかとも思った。 ( )